ゼニアスーツを支える素材たち:キュプラ裏地と3種のボタン

ゼニアスーツを支える素材たち:キュプラ裏地と3種のボタン

ゼニアのスーツは厳選されたウールから作られており、着心地の良さや生地の美しさから世界的な人気を集めています。しかしゼニアの品質を作り上げているのは、ウールだけではありません。
ゼニアスーツの着心地を陰から支えているのが、キュプラという素材から作られた「裏地」です。また美しい生地を飾るために、数種類の「ボタン」を自社製造しています。
それぞれのアイテムにはどのようなこだわりがあるのでしょうか? 
今回は、ゼニアスーツの快適な着心地を陰ひなたに支える2つのアイテム「裏地」と「ボタン」についてご紹介いたします。

 

 

 

 

 

ゼニアスーツの着心地を支える裏地「キュプラ」

ゼニアスーツを支える素材たち:キュプラ裏地と3種のボタン

スーツの内側に付いている裏地には、「キュプラ」という素材が使われています。既製服ではポリエステル裏地を使ったものも増えていますが、オーダースーツではゼニアをはじめとした多くのメーカーがこの素材を重宝しています。

 

 

 

スーツ裏地に使われる「キュプラ」という素材

「キュプラ」とは、コットンの綿を採った後に残る産毛から作った再生繊維です。
通気性の高い滑らかな裏地を作ることができ、ゼニアなどの高級生地を使ったオーダースーツの裏地によく利用されています。

キュプラの材料は、繊維用コットンの種に付いている細かい産毛「コットンリンター」。
Tシャツなどに使われるコットン(木綿)の綿毛は、種子を守るクッションのような役割を担っています。これに対して、コットンを収穫した後に残るコットンリンターはあまりにも細かい産毛なので、そのまま撚り合わせても繊維にすることはできません。

コットンリンターを再利用できないか試行錯誤を重ねた末にできたのが、キュプラという素材。滑らかさと通気性が高かったため、スーツの裏地によく使われるようになりました。

 

キュプラができるまで

最初のキュプラは、電気工事用のフィラメントとして開発されました。
天然繊維を再利用した経済的な繊維でしたが、通電性が低くあまり好評では無かったようです。しかしキュプラの制電性と滑らかな肌触りに注目したのが、ドイツの化学繊維工場・J.P.ベンベルグ社でした。

ベンベルグ社は1897年、コットンリンターを銅アンモニアで溶かし、硫酸で繊維状に固める「銅アンモニア法」を確立し、特許を取得。衣類の裏地として広く浸透していきました。
このベンベルグ社は1971年に他の繊維工業に吸収合併されてしまいましたが、その技術は日本の化学工業に受け継がれています。

 

ゼニアに活かされる日本の繊維技術

ゼニアは2005年から、日本産のキュプラを裏地に取り入れるようになりました。
1928年に日本の化学工業・旭化成工業は、ベンベルグ社の技術を1928年に取得し、現在でもブランドキュプラ「ベンベルグ」として製造し続けています。日本産キュプラ「ベンベルグ」の評価は海外でも高く、「裏地の王様」と称されています。

ベンベルグを導入するまでは、ゼニアも他のスーツブランド同様、イタリア産キュプラを使用していました。しかし2005年、「メイドインイタリアであるよりも、メイドインゼニアであるべきだ」という考え方から、キュプラの技術に優れたベンベルグの採用に至ったようです。

一般的にレーヨンよりもキュプラのほうが高価だとされています。しかしゼニアの場合、高価なシリーズであれば高級キュプラ「ベンベルグ」が使われているというわけではないようです。
安価なゼニアスーツでもベンベルグ100%ということもあれば、上位クラスでもレーヨン40%混合ということもあります。またウール生地自体が湿度に強いものであれば、裏地を付けないこともさえあるのです。
このようにゼニアはより良い品質のスーツを作るために試行錯誤を重ねながらスーツを作っています。毎年のように素材や製法が見直されており、そのたびにより着心地の良い製品をリリースし続けています。

 

キュプラの特性

ゼニアスーツを支える素材たち:キュプラ裏地と3種のボタン

1.吸水性・放湿性の高さ
ゼニアのスーツにキュプラが使用される理由は、その吸水性の高さにあります。
ウールから作られたスーツは、生地自体がある程度吸湿性を持っています。しかし脇や首回り・膝裏といった箇所はウールでさえ蒸れやすいので、より吸水性・放湿性に富んだキュプラが選ばれるのです。ゼニアの着心地は、こうしたキュプラの呼吸によって作られているといって良いでしょう。

2.制電性の高さ (静電気の溜まりづらさ)
吸水性に富んだキュプラは、乾燥する冬場でも一定の水分を保持します。そのため脱ぎ着するときの静電気が発生しづらいという特性を備えています。天然繊維と化学繊維それぞれの良さを持つキュプラは、冬場の寒さにも柔軟に対応する素材なのです。

3.ドレープ性の高さ
ドレープとは日本語で「掛布団」や「カーテン」を意味し、コシが弱く柔らかい布の性質を指す言葉です。ウール生地のような「ハリ・コシがある素材」とは反対の性質です。
ダンス用スカートなどでは「回転したときにふわりと広がる性質」と説明することがありますが、メンズスーツの裏地では「身体にフィットする性質」を発揮します。

生地が身体にまとわりつくと、一見暑苦しさを助長してしまうような気がしますが、むしろ汗を発散する特性を活かすためにドレープ性は欠かせない性質です。
身体と生地との間に空間ができないので、汗が揮発・充満することがありません。前述したキュプラの放湿性を活かして、服の中がサウナのように蒸れるのを防いでくれます。
反対に冬場になると、密着した裏地が吸水・保湿してくれます。体表に空気の層を作ることで、体温が逃げるのを防ぐ機能があるのです。

 

キュプラの弱点

湿度に強く、静電気を抑え、身体にふわりとフィットするキュプラ。
しかし天然繊維であるがゆえに、化学繊維よりも耐久性に劣ってしまいます。擦れや引っ張りのといったダメージが蓄積しやすい「袖口」「脇回り」では、裏地が擦り切れてしまうことも少なくありません。目に見える裂け目がなくても、生地が傷んだり毛羽立ってしまうこともあります。

またキュプラは「揮発した汗」、つまり気体の水には強いものの、大量の液体には弱い性質を持っています。
人間の汗程度なら問題ありませんが、洗濯などで水に付けると裏地にシワが寄ってしまうことも。ご家庭でスーツの洗濯をおすすめできない理由は、キュプラの弱点も関係しているのです。

「耐久性」や「洗いやすさ」といった観点から見れば、ポリエステルに軍配が上がります。
しかし多くのスーツでキュプラが使用されるのは、その弱点を補って余りあるだけのメリットがあるからです。何より本当に良いスーツとは、きちんと手入れをして着こなせば何年も使い続けられるもの。スーツテーラーでは、裏地を交換・補修することでキュプラの弱点に対応しています。

 

ゼニアオリジナルの3種のボタン

ゼニアスーツを支える素材たち:キュプラ裏地と3種のボタン

ゼニアスーツに使われている3種類のボタンは、すべてゼニア社オリジナルの製品。
ボタンのふちにはゼニアの社名が彫られており、多くのテーラーでオプションとして用意されています。

●水牛ボタン
天然の水牛の角から作られるこのボタンには、ひとつとして同じ柄は存在しません。
漆のような黒ボタンから、べっ甲を思わせるまだら模様、希少な半透明クリーム色など、ボタン自体が個性を持っています。
水牛ボタンのツヤは、プラスチックでは出せない温かみがあり、ウールが持つ独特の光沢との相性は抜群。厳選された素材から成るゼニアスーツにもよく重用されています。

水牛の角は、経年劣化に強い素材として知られ、昔から印鑑などにも使われてきました。模様や年輪の入った角から削り出しているため、ボタンの色落ちやメッキ剥がれなどは起こりません。まさに長く愛されるゼニアスーツに適したボタン材だと言えます。

●蝶貝ボタン
白い蝶貝ボタンは、真珠を作りだすシロチョウガイを使用。まさにパールを思わせるような上品な輝きを帯びています。
黒いボタンに使われるクロチョウガイは、白蝶貝よりもシックな輝きを持った二枚貝です。高級腕時計の文字盤にも使われており、ダークスーツにさり気ない高級感を与えてくれます。

●ナットボタン
ナットボタン(コロゾボタン)は、太平洋諸島や南米原産の「ヤシの実」の種から削り出したボタンです。ゾウゲヤシから採れる種子は磨くと乳白色の象牙色になり、本物のアイボリーにも引けを取りません。
このアイボリーナットの色・ツヤを活かしながら、生地に合わせて黒やブラウン、飴色などに染色していきます。さまざまな色合いのボタンが作れるので、柄物シャツやレディースなど幅広い用途で使われます。

水牛や蝶貝が経年劣化に強いのに対し、ナット材は使い込むほどに変化を楽しむことができる素材です。スーツをオーダーされる際は、ご自身の用途に合わせてボタンを選んでみてはいかがでしょうか。

 

ゼニア特製ボタンの魅力を活かす「袖ボタン」のアレンジ

ゼニアスーツを支える素材たち:キュプラ裏地と3種のボタン

ゼニアオリジナルボタンは、そのひとつひとつが天然素材ならではの個性を持っています。
フロントボタンはスーツ前面の彩りになりますし、機能的にも必要不可欠です。しかし袖口にあるボタンは、そもそもなぜ付いているのでしょうか? 

「袖ボタン」というスーツの部品は、実に長い歴史を持っています。
1812年、極寒のロシア遠征から帰ってきたフランス皇帝ナポレオンが、戴冠式用の軍服に導入したのが始まり言われています。その目的は、冬の北風が袖口から入り込むのを防ぐ防寒対策、あるいは水仕事などをする際に腕まくりできるようになど、さまざまな説があるようです。

今では装飾的な意味合いが強くなっており、袖自体も開かない形だけのものが一般化しました。しかしスーツの個性を出すデザインとして人気が高いため、ゼニア特製ボタンのようにさまざまな素材のものが流通しています。デスクワークが多い方はあまり金属ボタンを好まず、ボタン無しかナットボタンなどを選ぶことが多いようです。
袖ボタンのファッション性は高く、その材質だけでなく縫い付け方やボタンの色まで多種多様なスタイルが確立されています。

●袖ボタンの色を変える
一般的な既製スーツでは単色の袖ボタンを並べることが多いですが、オーダースーツでは「ボタンの色」を変えることも可能です。袖ボタンの先端だけ淡色のボタンに替えるといったスタイルが一般的です。
ひとつひとつ模様の違う水牛や蝶貝のボタンの魅力を、十分にアピールできます。

●袖ボタンの数を変える
袖ボタンの「数」は2~4個が普通ですが、5個6個と付けられたスーツも存在します。
小ぶりかつ淡色・明色の素材を使用してボタン同士の端がかかるように縫い付ければ、多すぎる印象もなく上品に仕上がります。
濃色だと目立ちすぎてしまうので、無垢のアイボリーナットか淡色の水牛ボタンがおすすめです。

●袖ボタンの縫い付け方を変える
袖ボタンの「縫い付け方」を注文できるのも、オーダースーツならではの魅力です。
一般的な3連ストレートだけでなく、アーチ形に縫い付ける方法も人気になっています。
アーチ形スタイルは、白系のジャケットや華やかなドレススーツの隠れたワンポイントになるでしょう。

●ボタン糸の色を変える
縫い付けている「ボタン糸の色」を変えることで、袖口に差し色を加えることができます。暗色のスーツならすべての縫い付け糸をカラーにしてもいいですし、パープルなどの印象的な色をプラスしてもいいでしょう。先端のボタンだけ別色にすれば落ち着いた色合いに。

オーダースーツの魅力は、とことん細部までこだわれる点にあります。豊富な種類の特性ボタンは、スーツに個性を与えてくれるでしょう。見た目にも機能性にも優れたゼニアのスーツ、日々の手入れを欠かさずに大切に使い続けてあげてください。

 

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