ゼニア日本上陸から50周年 四季折々のスーツ生地展開



ゼニア日本上陸から50周年 四季折々のスーツ生地展開

ゼニア日本上陸から50周年 四季折々のスーツ生地展開

2017年、イタリア発祥のファッションブランド「エルメネジルド・ゼニア」は、日本に進出して50年を迎えました。
ゼニア社は、この長い歴史の中で日本を深く分析し、この国の気候や流行に合わせてさまざまな生地を世に送り出してきたのです。
日本上陸から50周年を迎えるゼニアの変遷と、日本の風土に合ったゼニアスーツをご紹介していきます。

 

 

 

 

 

 

ゼニア日本進出50周年の歴史

ゼニア日本上陸から50周年 四季折々のスーツ生地展開

ゼニアにとって日本のスーツ市場は、世界でも5本の指に入る重要なマーケットだといわれています。まずは日本におけるゼニアスーツ50年の歴史を紐解いていきましょう。

ゼニアスーツが初めて日本に上陸したのは1967年、関西の小さな紳士服店に品を卸したことから始まります。
今でこそ世界展開しているゼニア社ですが、イギリスやフランスなど主要各国に進出したのは80年代に入ってからのことでした。ゼニアにとって日本は、世界に先駆けてゼニアスーツを送り出した記念すべき国。のちにご紹介する記念式典や日本をテーマとしたコレクションの発表には、同社にとって特別な思い入れがあるのでしょう。

 

ゼニアが日本に普及した70年代

ゼニアが広く知られるようになったのは、日本進出から3年後の1970年。新宿・伊勢丹に店舗を設けたのがきっかけです。
当時人々にとって百貨店の存在はとても大きく、伊勢丹メンズ館の開業に合わせたこの東京進出には大きな意味があったといえます。創業者の名を継ぐ、現CEOエルメネジルド・ゼニア氏は、当時の東京進出を以下のように評価しています。

『新宿は、古くから産業の中心地であった銀座に比べて「新しい発展性」を秘めた街でした。もちろん伊勢丹のような大衆の人気を集める百貨店の存在も大きい。新宿には素材の品質などに特化した高級専門店が少なく、この進出には大きな意味があった』

さらに77年には、日本の販売拠点となるゼニア・ジャパンを発足。日本でのブランド展開を本格化させていきました。
70年代は、ビートルズなどの影響により海外アーティストブームが日本中に浸透した時代。3つボタンにハイウエストというモッズスーツに憧れる若者も多かったのですが、高級紳士服はなかなか手が届かない代物でした。現在スリムスーツの主流となった「2つボタンスーツ」も、この頃に広まったスタイルです。
ゼニアはこの流行の機微を掴み取り、77年には国内で「高級既製服」の販売を開始。素材の良さを魅力とするゼニアスーツを、安価に流通させることに成功し、国内ユーザーの裾野を広げていきました。
さらにテーラーが採寸してスーツを仕立てる「パターンオーダー」も一般化。フルオーダーよりも工程を簡素化することで、体型にフィットするスーツを安価に注文できるようになったのです。

 

ゼニアの多様な生地が人気を集めた80年代

高度経済成長期の80年代に入ると、日本のスーツスタイルは色・柄・シルエットなど個性的なものになっていきました。シルエットの演出のみならず、ボタンの数や素材などで個性を演出するダブルスーツブームが起こったのもこの時期のこと。
折しも80年代は、ゼニアがヨーロッパ各地やアメリカなど、全世界的な展開を推し進めた時期です。日本にもゼニア社オリジナルボタンなど、多くのアイテムが流通するようになりました。この頃からゼニアは、日本をアメリカや中国などにも匹敵する世界的スーツ市場として注視していたようです。
国内にも約300種類にも及ぶ生地レーベルが流通するようになり、日本のゼニア加盟テーラーでもバラエティに富んだオリジナルスーツが作られるようになりました。

当時、日本では「クールビズ」の走りともいわれている「省エネルック」が提唱されました。
夏物スーツやノーネクタイという装いは、当時としては画期的な施策でしたが、半袖のジャケットなどの突飛なアイデアは受け入れられなかったようです。
夏でも外出の多いビジネスマンなどを中心に“長袖ジャケット”のニーズは衰えず、High-Performanceのような「涼しいスーツ」は大変注目を集めました。

 

ポストバブルに悩まされたゼニアの90年代

海外高級ブランドのゼニアにとって、90年代は試練の時代だったかもしれません。
バブルの影響が残る90年代初頭まで、日本の紳士服業界は年間約8000億円を記録する一大産業でした。個性的なスーツへの需要は衰えず、太さの違う糸で織られた多彩な柄の生地や、ウール特有の光沢を活かしたスーツが人気になりました。

ところがその後の不況や少子化、さらにカジュアルな服装の多いIT業界の拡張を受け、2000年代の日本の紳士服業界は約3000億円台にまで縮小。海外製ラグジュアリー路線のゼニアスーツは、以前のようには売れなくなってしまいます。
このような状況に陥ったゼニア社ですが、あくまでもゼニアスーツの高品質・高級服という戦略を維持し続けました。CEOエルメネジルド・ゼニア氏はこの時期を振り返って次のように語っています。
「生地のクオリティには自信を持っているため、他社のような値下げは行わない。その代わりに、より多くの人が手に取りやすい低価格ラインナップの充実に力を注ぎたい。」
100年以上に渡ってウール生地を探求してきた同社だからこそ、品質に見合った価格は譲れない点だったのでしょう。

 

ポストバブルの苦難を乗り越えた2000年代

ゼニア日本上陸から50周年 四季折々のスーツ生地展開

ゼニアは、そのブランド価値に自信を持ち続け、国内展開の手を緩めませんでした。
2009年には新宿区の中心にHouse of Zegnaと呼ばれるグローバルストアを開店。店内には若者向けブランドから最高品質のクチュールなどが展示され、ゼニアスーツの最先端を体験できる施設です。

近年は世界的なデフレによって、イタリアと日本の貿易上厳しい局面も存在しました。
しかし、急成長を続ける中国をも凌ぐスーツ市場であることから、日本・イタリア双方の政府も、首脳クラスでの協力を惜しみませんでした。その結果、ゼニアスーツの売り上げは現在、1500億円を上回る規模に上り、国内に30店舗を構える一大スーツブランドの地位を確立したのです。

 

2017年ゼニア・ジャパン50周年セレモニー

2017年、日本のスーツファッションの流行を捉え続けてきたゼニアは、日本に進出して50周年を迎えました。この記念の年を祝して、2017年5月、在日イタリア大使館にてアニバーサリーセレモニーが催されました。この日のためにイタリア・トリヴェロにある本社から、服地部門を統括するフランコ・フェラリス氏も来日しており、日本という市場の重要性や同社の思い入れが感じられます。
会場内にはこれまでゼニアが生産してきた中でも特に選りすぐりのコレクションが展示されました。近年のゼニアスーツは、ゼニアトロフィー制度によって選び抜かれたウールが用いられています。

さらに50周年を記念して2017年9月5日には、日本をテーマとしたコレクションProject “Made in Japan”も開催されます。
このコレクションでは「テーラー」「デニム」「カジュアル」「アクセサリー」といった4つのテーマが設けられており、この式典の為に製造・デザインされた22種類の新作コレクションが発表予定とのこと。
すでにリークされた作品には、日本人デザイナーが手がけたシアサッカー生地のプルオーバーシャツや、ナポリのスーツテーラーによる異なる生地を組み合わせたセットアップなどがあります。
このコレクションのデザイナー・テーラーには、日伊それぞれの若手アルチザンを起用。100年の伝統を持つゼニアのコレクションに、日本のスーツ職人の技術力や新しい感性を吹き込む目的があるそうです。今後も新たなコレクションの登場や、既存レーベルのさらなる発展が期待されます。

 

日本の四季に合わせたゼニアの生地展開
日本の高温多湿な春夏を過ごす生地レーベル

ゼニア日本上陸から50周年 四季折々のスーツ生地展開
春夏シーズンになると、アジア特有の高温多湿な気候に加えて、都市部では激しい直射日光と照り返しが日本のビジネスマンを襲います。そのためスーツに用いる生地に対しても、高湿度の環境にも負けない頑強なものが模索されてきました。

ゼニア日本上陸から50周年 四季折々のスーツ生地展開

1985年にリリースされたHigh-Performanceは、ウール糸を強力に撚り合わせることで、今までよりも頑丈な強撚糸を実現。夏物特有の目の粗い生地に織り合わせても一定の強度が保たれ、通気性の高いスーツを作ることができるようになったのです。強撚糸を活かした「透けるようなスーツ」は、80年代の「省エネルック」の波に乗って一躍人気レーベルとなりました。

ただ、このHigh-Performanceは、湿度の高い日本の梅雨に悩まされてきました。
当初この生地はイタリアの気候に合わせて設計されたのですが、通気性を重視するあまり糸の量を減らす形となり、日本の湿度環境の下では「波打つような生地ヨレ」が現れるようになったのです。
そこで2010年に開発された繊維加工技術が、直射日光を反射するCool Effect。
繊維を加工する際、太陽光の熱を約70%カットする特殊塗料を塗ることで、夏の炎天下でも熱くないスーツを作ることができるようになりました。
この技術を応用した生地レーベルHigh Performance-Cool Effectは、通気性と太陽光反射という2つの涼しさを得ることができました。もともと通気性に秀でていたHigh Performanceの繊維を太くし、生地の密度を向上することで、梅雨の生地ヨレを大きく改善することができたのです。
50年という長い年月にわたって、ゼニアが日本のビジネスマンや文化人に選ばれてきた背景には、日本というマーケットに対する絶え間ない分析と、繊維加工へのあくなき探求心があったのでしょう。

 

秋を快適に過ごし冬の寒さを凌ぐレーベルTrofeo

ゼニア日本上陸から50周年 四季折々のスーツ生地展開

秋は一年の内でもっとも無理なくスーツスタイルを楽しめる季節ではないでしょうか。
特に10月・11月の気候は本国イタリアとも大きな差がなく、ゼニア本来の着心地を体感することができます。

ゼニア日本上陸から50周年 四季折々のスーツ生地展開

その中でもゼニアを代表するTrofeoは、ジャケットが快適に着こなせるこの季節にこそ袖を通したいスーツです。
世界中の契約羊毛農家から選抜した19.5micron以下のウールのみを使用しており、肌ざわり、張りコシ、光沢ともに優れたゼニアの代名詞ともいえる生地です。

またTrofeo Cashmereは、アルプス山間部に属するトリヴェロの冬を乗り越えるため、メリノウールにカシミヤを織り込んだ生地レーベルです。このレーベルは、秋冬スーツにもよく用いられる起毛性のフランネル生地でありながら、ウール特有の肌ざわりや光沢を失っていません。
空気層を多く持つメリノウールは、常に適度な湿度を保つ特性を持っています。そのためイタリアの雪の多い冬にも、日本の乾燥しがちな冬にも対応する防寒機能の高いスーツを作ることができるのです。

ゼニアが日本で展開している生地レーベルは、約300種にも上ります。
これらは単なる既製品のマイナーチェンジというわけではなく、日本の風土を研究して開発された製品です。
そして、それらをお客様ひとりひとりのために仕立て上げるのが、スーツテーラーの仕事。
熟練のテーラーによって採寸・縫製されるオーダースーツは、着用時の“遊び”までを計算に入れて作成されます。
日本という国で50年の歴史を持つゼニアのスーツ。その品質をぜひ店頭で確かめてみてください。

 

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