ゼニアの品質を称えるトロフィー制度“ゼニア・アワード”の歴史



ゼニアの品質を称えるトロフィー制度“ゼニア・アワード”の歴史

ゼニアの品質を称えるトロフィー制度“ゼニア・アワード”の歴史

ゼニアは生地の品質で高い評価を受けているメンズスーツブランドですが、同時に創立当初から繊維加工に携わるファブリックメーカーでもあります。「世界一の生地作り」を追求するために、素材となるウールをすべて生産者と直接契約して調達する徹底ぶりです。
彼らの絶え間ない品質管理を称賛するために、ゼニアは毎年トロフィー制度“ゼニア・アワード”を開催しています。アワードには世界屈指と言える品質の素材が出品され、毎年ハイレベルな品評が行われます。
今回は2017年に50年の節目を迎えた、ゼニアのトロフィー制度についてご紹介します。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼニアのウール生産者を称えるトロフィー制度“ゼニア・アワード”

●ゼニアのトロフィー制度とは
ゼニアの厳しい仕入れ基準をクリアした高品質な素材の中でも、特に優れたものを納める生産者を表彰する制度がこの「トロフィー制度」です。
年に1度開催される「エルメネジルド・ゼニア・アワード」は、オーストラリアのスーパーファインウール生産者協会(ASWGA)と共に、ウールを中心としたさまざまな素材のトロフィーを開催しています。ゼニア・アワードはウールを代表とするさまざまな素材の部門に分かれており、それぞれ繊維の繊細さや柔軟さなどが品評されます。

メインイベントであるゼニア・ウール・トロフィーでは、一頭のヒツジからわずか0.8%しか採れない「エクストラファインウール」の品評会が行われます。このエクストラファインウールは、衣類用羊毛の中でも最高級品と称される「スーパーファインウール」の中でも特に繊細なウールです。スーパーファインウールが19.5micron以下のものを指すのに対して、エクストラファインウールは17.5micron以下という、きわめて高水準な羊毛を指します。
ウール・トロフィーに出品されるフリース(羊毛の一枚皮)は、貴重なウールの中でも特に品質の高いものばかり。まさに「世界一の羊毛」と言って良い素材が集う品評会なのです。

このゼニア・アワードの目的は、ゼニアが掲げる思想「世界一のファブリック」を実現するためには、より繊細な素材の生産を奨励すること。素材の選定から製品加工に至るまでこだわり続けてきたゼニアが主催する、天然繊維業界で最初の国際品評会です。
ゼニアの生地に使われているウールなどの素材は、すべて「ゼニアファミリー」と呼ばれる自社契約牧場から直接仕入れています。ウール・トロフィーのグランプリにはヒツジの紋章が刻まれた銀の器が進呈され、その栄誉が称えられます。ゼニアの生地はその品質に定評があるだけでなく、名だたる紳士服メーカーにも販売されているため、このアワードは世界から注目されるゼニアの一大イベントなのです。

●ゼニア・アワード50年の歴史

ゼニアの品質を称えるトロフィー制度“ゼニア・アワード”の歴史

トロフィー制度は1963年オーストラリア・タスマニア島で初めて開催されました。
スーパーファインウール・アワードは当初、オーストラリア・タスマニア島のメリノウールのみが対象でした。
タスマニアは、都市部では一年を通して温暖な気候が続きますが、メリノ羊が飼育されている山間部は雪が降り積もることもあります。夏の暑さや冬山の寒さに耐え、一日15時間も太陽の下にさらされるメリノ羊は、吸湿・放湿性に優れ、繊細なウールが採れるのです。

しかしゼニアの事業が世界中に進出した1980年代になると、高品質なウールをより多く調達するべく、対象地域がオーストラリア全土に拡大されました。広範囲のウール生産者を対象としたことで、多くのエクストラファインウールの中から、とりわけ品質の良いウールが選ばれるようになったのです。オーストラリアメリノウールは世界のウール貿易量の45%を占めているため、きわめて高い品質のウールが出品されるようになりました。

より細く、柔軟で、肌ざわりの良いウールがエントリーするようになり、トロフィー制度の競争が激しくなった2002年、最も繊細なウールを品評する「ヴェリュス・オウレウム・トロフィー」部門が開設されました。「金色の羊毛」を意味するこの部門では、エクストラファインウールの中でも13.5micronを下回るウールのみが出品できる、現在のアワードの中で最も繊細で希少なグランプリとなっています。対象地域もオーストラリア全土だけでなくニュージーランドが加えられ、ノミネート素材の審査はとてもレベルの高いものになったことでしょう。

このように毎年レベルの高いウールがノミネートされるトロフィー制度は、2017年に50年を迎えました。同年4月、オーストラリア・シドニーのロイヤルホールで開催された記念式典には、世界中から1000人を超えるゲストが招かれ、世界31か国からメディアが駆け付けるなど、ゼニア・アワードの注目度が感じられます。
記念式典では、2017年の秋冬コレクションが60種類発表されました。このコレクションには、歴代のウール・トロフィーで過去最高の品質を記録した2013年のグランプリが使用されており、まさにアワード50周年にふさわしい品質となったようです。

 

ゼニアの品質を証明する「ゼニア・ウール・トロフィー」

ゼニアの品質を称えるトロフィー制度“ゼニア・アワード”の歴史

ゼニア・アワードに出品されたウール素材は、イタリア本社の代表パウロ・ゼニア氏やASWGA理事長サイモン・キャメロン氏を始め、ゼニアの品質管理を担う判定員の署名のもとで審査されます。審査の基準はウールの繊細さや美しさばかりでなく、製品として取り扱うための長さ・均一さなども求められるとても厳しいものです。
2017年3月に行われた「スーパーファイン・メリノ・ウール・トロフィー」でグランプリを受賞した生産者David & Angie Waters社を例に、それぞれの基準を見てみましょう。
(それぞれの基準を「 項目: D&A社の記録-D&A社の得点/満点 」で表示しています。)

●Micron(繊維の細さ):15.0micron
スーパーファインメリノウールの特徴は、繊維の繊細さと柔軟性にあります。繊細なウールから作られた生地は美しい光沢を持ち、薄くても丈夫に仕上がります。一般的なウール繊維の細さが30micron程度であることを考えると、ゼニアに用いられるウールがどれほど繊細であるかがお分かりいただけるかと思います。

●Yield(繊維の長さ):75.5ヤード-8.2 点/10
出品されたウール1俵分の総延長の長さを表しており、D&A社の記録は69mにもなりました。ウール・アワードのコンペでは、1俵およそ40gの出荷単位で出品されます。同量の重さでこれだけの長さを確保できるということは、それだけウール一本一本が軽いということがわかります。

●Strength(繊維の強さ):48.0-20点 /20
ウールの強度は、伸びやヨレに対する柔軟さによって測ることができます。Micronの項目でお伝えしたように繊細な糸ではありますが、ゼニアのスーツに使用するのに申し分ない強度を保った素材だと言えます。

●Conmformity to Length(繊維の長さの揃い具合)-18.50点 /20
ある程度の長さを確保するためには、年数回のウールの刈り取り回数を減らし、量より質を優先しなければいけません。さらに柔軟さも損なわないように飼育しなければいけないため、製品として出荷するためには相当な技術が要るようです。

●Evenness(繊維直径の均一さ)-19.50点 /20
どれだけ繊細で美しいウールでも、繊維の太さが均一に保たれていないと生地の肌ざわりに影響が出てしまいます。天然繊維の太さを均一に保つのは簡単なことではありません。「ゼニアは肌ざわりで違いがわかる」と言われる所以は、ウール生産者の絶え間ない品質管理によって支えられているのです。

●Excellence(優秀さ)-4.6点 /5
すべての基準を勘案して出される総合得点です。D&A 社がグランプリを獲得した理由は、全ての項目が高得点を獲得している点と言えます。ゼニアの生地に使用されるウールは、それ自体が製品として高い品質を保持しているのです。

●Bales(出品点数)-1個 /上限5個まで
Yieldでもご紹介した、ウールを出荷するための布パッケージ。この審査では5点まで出品することができましたが、D&A社は堂々と1点のみで挑みました。生産者が自信を持った製品だからこそ、ゼニアはファブリックメーカーとして高品質な生地を製作できるのです。

 

ゼニア・ウール・トロフィーの名を冠した生地Trofeo

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選び抜かれた素材から作られるゼニアの生地は、「一度袖を通すと他のスーツは着られない」と言われるほどの品質を誇ります。
その代表とも言える製品が、生地レーベルTrofeo(トロフェオ)です。
その名の通り、トロフィーを受賞したウールだけが用いられており、コシがありきめ細やかなスーツが仕上がります。ゼニア・アワードの記録は次々に更新されているので、毎年のように軽量化した生地がリリースされています。

●美しく強靭なTrofeoの生地
ドレススーツなど美しく軽やかな生地は破れやすくなることも多いですが、Trofeoはスーツとしての強度も劣りません。
ゼニアは、年々高品質になっていくウール・トロフィーの躍進に合わせて、2009年に糸の製法を一新しました。それまでよりも強い力で繊維を撚り合わせる「強撚糸」製法を採用したのです。いくら丈夫なウールだからといっても、繊維がちぎれないギリギリの力で撚り合わせることは技術的にとても困難です。まさに繊細で柔軟性に富んだウールと、高い繊維工技術を併せ持つゼニアだからこそ実現した生地と言えます。

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●春夏・秋冬2つのモデル
Trofeoは春夏と秋冬2つのモデルが取り揃えられており、季節を問わずその質感を楽しむことができます。

春夏モデルは、メリノウールの特性を活かした着心地のいいスーツです。
吸水性に富んだメリノウールは、汗をよく吸い、すぐに発散してくれます。繊細なウールを高密度で織り合わせているため、身体にまとわりつく印象を持ちません。この湿度コントロール能力は、現在の化学繊維技術でも再現できない機能です。ゼニアが天然素材にこだわる理由がお分かりいただけるのではないでしょうか。

ゼニアの品質を称えるトロフィー制度“ゼニア・アワード”の歴史

一方、秋冬モデルは、軽量で冬を暖かく過ごせるスーツです。
その特徴は、体温を逃がさない保温性にあります。メリノウールは湿度の低い環境では、適度な保湿能力を発揮します。保湿した生地と身体の間に空気の層を作るので、外気に体温を奪われなくなるのです。
また、秋冬のTrofeoを手に取っていただくと、他の秋冬スーツよりも軽量なことにも驚かれることでしょう。生地の厚くすることで空気層を確保している他のスーツと違い、Trofeoは繊維自体の能力で暖かさを保ちます。

毎年巨額の資金を投じて開催しているトロフィー制度「ゼニア・アワード」は、上質な素材を提供する生産者を称える場であるとともに、生産者のプライドをかけた激しい競争の場でもあります。繊維の繊細さや肌ざわりといった厳しい審査基準は、まさしくゼニアのスーツの魅力を表したポイント。お近くのスーツテーラーでその品質を体感してみてはいかがでしょうか。

 

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