世界一美しい生地を持つ「ゼニア」スーツの魅力
目次
- ゼニアとは
- ゼニアの歴史
- ゼニアが誇る3つのこだわり
- ①原材料へのこだわり
- ②水へのこだわり
- ③繊維へのこだわり
- シルエットの魅力
- 「糸の宝石」カシミアのメンテナンス
- 快適さを支える裏地
- ゼニアの生地レーベル
- ①生まれ変わったゼニア筆頭レーベル「トロフェオ」
- ②シワに強い高機能レーベル「トラベラー」
「エルメネジルド・ゼニア」は、世界の第一線で活躍する実業家や俳優から注目されている、高品質な生地で人気のスーツブランドです。原材料から加工、生地を活かしたスーツ作りなどにこだわった製品は、数ある世界的ブランドの中でも優れた質感を持っています。この記事ではゼニアの歴史や製品の魅力、生地に対するこだわりなど、ラグジュアリーブランド「ゼニア」についてご紹介します。
ゼニアとは?
イタリアを代表する老舗ブランド「ゼニア」は、正式名称を「エルメネジルド・ゼニア」と言います。イタリア北部のアルプス山麓にあるトリヴェロで1910年に創業して以来、実に100年以上愛されているスーツです。
ゼニアが長く愛されている最大の理由は、最高品質の生地です。創業者であるエルメネジルド・ゼニア氏は創業当時から「世界一の美しさを持つファブリック」を作るという信念を持っており、高品質な原毛を原産地から直接買付けを行い、繊維加工から製品の生産まで全て自社で行っています。
ゼニアの歴史
創業者であるエルメネジルド・ゼニア氏は、イタリア北部・トリヴェロの小さな服地工場に生まれました。彼の父は原羊毛を生地へ加工する繊維工場を営んでいましたが、当時の工場はまだ小さく、使用している織機はわずか4台のみでした。
18歳になったゼニア氏は家業を継ぎ、繊維工場の規模を拡大していきます。そして事業を開始してわずか18年後の1938年にはアメリカへ生地を輸出、さらに1945年には世界40か国へ輸出する企業へと成長しました。
1960年代にエルメネジルド・ゼニア氏の2人の息子、アンジェロとアルドが経営を継ぐと、ゼニアブランドの持つ生地の強みを活かしてアパレル業へと進出していきます。1968年、これまでの拠点であったトリヴェロとミラノの中間の都市ノヴァーラに工場を建て、スーツやシャツ、コートといった製品の生産を開始しました。元々ブランド力を持っていたゼニアのコレクションはすぐに注目を集め、近隣のスイスやスペインへの輸出が開始されました。
1972年にはス・ミズーラ(パターンオーダー)事業とプレタポルテ(高級既製服)事業という現在の販売スタイルが確立し、ゼニアブランドの高品質を保ちながらオーダースーツとしては安価に流通させることを可能にしました。
こうした事業拡大が人気を後押しして、1980年代にはパリ、ロンドン、ミラノなどに単独ブランドショップを開設しました。現在ではブラジルやインドなどの途上国などにも店舗を構え、80か国555店舗の正規取扱店を展開しています。さらに世界に先んじて中国市場に注目しており、1991年に最初の店舗を開業。現在では中国全土で70店舗を構えています。
ゼニアが誇る3つのこだわり
小さな繊維工場から始まり、今では高級生地で世界的な注目を集めているゼニアですが、その成功を支えた秘訣は生地に対する3つのこだわりにあります。
●原材料へのこだわり
アパレルメーカーは加工された糸を買い付けて生地や製品を生産することが一般的です。しかしゼニアは「世界で最も美しいファブリック」作りのために原産地と直接契約をして高品質原毛を買付け、紡績、染色といった工程まで一貫して自社で生産しています。
原糸の材料となる羊毛は大変厳しく選び抜かれます。羊毛はオーストラリアやニュージーランドなど世界中の牧場から厳選して買い付けるのですが、その中でも脇や肩の非常に柔らかい羊毛のみを使用する徹底ぶりです。さらに紡績や染色などの原糸加工では、全工程が自社工場で徹底的に品質管理がされています。繊維工場から始まったゼニアだからこそできる繊維の光沢や耐久性へのこだわりです。
●水へのこだわり
ゼニアのあるイタリア・ビエラ地方には多くの繊維工場が集中しており、古くから毛織物の一大産地として注目されています。その理由はアルプス山脈に由来する水が毛織物の生産に非常に適しているためです。
繊維や毛織物製品を生産する工程では、羊毛の染色と洗浄を繰り返して原糸を作ります。このときカルシウムやマグネシウムといった金属イオン(ミネラル成分)含有量の少ない軟水を使うことで、染料を生糸にムラなく定着させることができるのです。また洗浄時にも泡立ち良く不純物が着くことが少なく、色ムラの少ない高品質な糸が生産することができます。
最近では人工軟水を使う工場も見られますが、ゼニアではアルプス山脈由来の高品質な自然水を使用しています。これは長年にわたる繊維加工の経験から、カシミヤやウールといった天然素材の持つ光沢を活かすには自然水を使用した染色が適していると考えているためです。
●繊維へのこだわり
スーツで使用される生地には細い繊維を使うことが一般的です。細い繊維で織られたものは軽量で肌触りがよく、光沢のある生地に仕上がるのですが、太い繊維よりも耐久性に欠けてしまうことがあります。繊維工場から出発したゼニアは、太さの異なる繊維を複合的に使うことで、高級感のある丈夫なスーツを作ることができました。
このようして作られた生地へのプライドは繊維の表示方法にも現れており、一般的な衣類の生地規格「スーパー表示」を使用していません。国際羊毛繊維機構(IWTO)が定めるウール糸の規格「スーパー表示」は、例えば17.5ミクロンのウール糸で織られた生地はSuper 120’sというように、耐久性や質感といった生地の品質を示す基準です。
ゼニアにとっての「生地の品質」とは、単なる繊維の太さだけでなく、その組み合わせや繊維の本数、織り方によって複合的に決まる価値です。そのため製品の繊維規格と実際の生地のイメージを混乱させてしまう統一規格を避けているのです。
シルエットの魅力
ゼニアの人気を支えているのは、生地の品質やバリエーションに加えて、スーツの見た目やデザイン性といったシルエットの魅力があります。ゼニアのス・ミズーラ(パターンオーダー)では、「ミラノライン」と「トリノライン」の2つのバリエーションが用意されています。ミラノラインは肩の部分がなだらかに作られており、スリムスーツが人気の現代的なシルエットです。一方トリノラインはよりトラディショナルな縫製を保っており、肩部分を強調してウエストをより引き締めることで、男らしいシルエットを生んでいます。
「糸の宝石」カシミアのメンテナンス
耐久性に優れた生地を扱うゼニアですが、長く愛用するには使用方法やお手入れも重要です。スーツを脱いだ後は繊維の捻じれを伸ばし、繊維の目からホコリを除去するためにブラッシングをしましょう。ウールの中でも「糸の宝石」と呼ばれるカシミアはとても繊細で、繊維が乱れてしまう水洗いを嫌います。そのためこまめなブラッシングによる汚れの除去が大切になってくるのです。
また一般的にスーツは毎日着るのを避け、1日休ませて繊維を回復させてやると、1着のスーツを長持ちさせることができます。スーツの休息には、ブラッシングだけでは戻らない繊維の捻じれを解消して、汗などの水分が飛ばす陰干しの役割があります。
快適さを支える裏地
ゼニアが採用している裏地は、合成繊維のポリエステルと綿花から作った再生繊維の混合糸から織られたキュプラです。スーツの裏地には、補強材としては天然繊維よりも強度のあるポリエステルが好まれますが、一方で肌触りや摩擦、汚れ防止など多くの機能が求められます。天然繊維を織り込んでいるキュプラは吸湿性に優れており、着脱の際の静電気を低減できる素材であるため、高級感のあるスーツに最適な裏地として選ばれました。
ゼニアの生地レーベル
最後にゼニアの代表的な生地レーベルについてご紹介しておきましょう。繊維の原料から加工まで多くのこだわりを持つゼニアは、耐久性に富んだものやスタイルを重視したもの、ブランドの最高級フラグシップなど、さまざまなレーベルを販売しています。特に人気を集めているのが「トロフェオ」や「トラベラー」といったものです。
●生まれ変わったゼニア筆頭レーベル「トロフェオ」
トロフェオはより高品質で繊細な原糸を撚り合わせて作られた代表的レーベルです。繊細な生地の持つ滑らかな肌触りを特徴とした、まさにゼニアの真骨頂といった生地です。従来のトロフェオは繊細さを保つために太い糸を織り込まなければならず、光沢感の少ないシックなスーツに使われることが多いレーベルでした。
そこで2009年から使用する生地の方針が改められ、さらに細い繊維を強力に撚り合わせた艶のある生地を採用しました。デザイン面でもヘリンボーンなどの柄を織り込むことで、シックなスーツだけではなく幅広い製品を作れるレーベルとして評価されています。
●シワに強い高機能レーベル「トラベラー」
トラベラーは、「シワのできにくさ」や「元に戻りやすさ」といった機能性に特化したレーベルで、出張や移動時間の長いビジネスマンに好まれています。スーツは繊維を休ませることが大切というお話を書きましたが、トラベラーのシワに対する回復力は特に優れており、「ハンガーにかけておけば翌日にはシワがなくなっているスーツ」として人気を集めています。
生地のシワは、生地が特定の方向に引っ張られることで繊維が捻じれて戻らなくなってしまったものです。通常の繊維は、2本の糸を同じ方向に回転させて撚り合わせているのですが繊維自体の軸が1つなので捻じれやすく、シワができやすい傾向があります。トラベラーは、2本の糸を異なる回転で撚り合わせることで、一方の糸が捻じれても、もう一方の糸が正しい方向を維持する2つの軸を持っているので捻じれが解消しやすいのです。繊維加工に得意とするゼニアならではの技術が詰まった生地だと言えます。
ゼニアは親子3代に渡って高品質生地を世に送り出してきた伝統的なブランドですが、100年続く技術改良によって現代でもレーベルや生地の品質が大きく向上しています。生地の素材からデザインまで細部にこだわるゼニアは、プレタポルテ(高級既製品)として手に入れるのもいいですが、あらゆる部分を持ち主の理想通りに仕上げるス・ミズーラ(パターンオーダー)で購入するのにも向いたブランドです。