「ドーメル」 フレンチスーツと英国生地の魅力を兼ね備えたブランド
フランスの高級紳士服ブランド「ドーメル」は、世界80か国以上に拠点を持ち、ハリウッドスターやセレブなど各界の著名人にファンを魅了し続けています。
その魅力は、イギリス生まれの生地とフランスのスーツ文化が融合した、スーツのエレガントな美しさにあるようです。
今回は世界最古のスーツ生地商社「ドーメル」の歴史を振り返りながら、その魅力をご紹介していきます。
ドーメルが誇るイングランドウール生地の光沢
フランスを代表する服地商社ドーメルのスーツが世に送り出されたのは1842年のこと。
当時弱冠22歳の創業者ジュールズ・ドーメルが、イングランド製服地をフランスへ輸入し始めたことから始まります。
ゆるやかな丘陵地帯が続くイングランドは、ヨーロッパ屈指のウールの産地です。ドーメルが長らく取り扱っているイングランド産ウールは、ペルシア絨毯にも引けを取らないといわれるほど豊かな光沢を持っています。
ドーメルは170年の歴史を持ちながら、未だ英・ウエストヨークシャーにテキスタイル生産拠点を構えています。雨の多いこの土地では、ウール生地を艶やかに仕上げるために欠かせない軟水が豊富に湧き出るそうです。
ドーメルに受け継がれるフレンチスーツの魅力
イングランドウールが持つ素材の魅力を色濃く反映したドーメルスーツですが、その根底にはフランスを代表する服地ブランドとしてのこだわりが存在します。
一般にフレンチスーツは、繊細で大人びたエレガンスが魅力だとされています。イタリアンスーツのような個性的デザインは無いものの、生地の質感がスーツを着る人自身を引き立てるような洋服なのです。
ドーメル生地は現代でも折り紙付きの品質を保っており、シャネルやイブサンローランといったフランスを代表する服飾ブランドにも提供されています。そういった意味で、ドーメルが持つフレンチスーツへのこだわりと英国生地の魅力は、出会うべくしてであった要素なのかもしれません。
世界ブランド・ドーメル自身が語る「ドーメルの持ち味」とは
イングランドウールの質感とフレンチスーツの美しさを兼ね備え、ヨーロッパで大きな成功を収めたドーメルは世界中へ進出していきます。
1880年代に中国などアジア市場へ進出すると、当時新興国だったアメリカやほとんど開発されていなかったアフリカ市場にまで裾野を広げていきました。日本への服地輸出がスタートしたのは1913年のことでした。
さらに1957年には世界で初めてモヘア繊維を配合したスーツTonicを発売。同社の名前は一躍世界中に知れ渡りました。アンゴラヤギから採れるモヘアは通気性がよく、当時珍しかったサマースーツとして大変な売れ行きを見せたそうです。
ドーメルスーツの市場価値を調査し続けてきた同社マーケティングディレクターは、「ドーメルの持ち味は、イギリス風であり、イギリス風でないところ」と語っています。ドーメル生地が持つ魅力は、世界のスーツテーラーの手によって形作られ、その土地を生きる人に最適な洋服へと変化していきます。
ブリティッシュクラシックにも、フレンチスーツにもない、ドーメルスーツの魅力。ぜひ一度店頭で確かめてみてください。