【フルオーダースーツができるまで】”仮縫い””中縫い”の大切さとは
スーツをフルオーダーで作る際、採寸や縫製、微調整など数多くの工程が存在します。お客様にぴったりの一着を完成させるため、概ね2、3か月程の期間をかけて丁寧に作り上げていくのです。そんなオーダースーツ製作で特に重要な工程となるのが、微調整の役割を持つ「仮縫い」と「中縫い」という2つの作業。
わざわざお客様にいらしていただいて、2回もの確認と微調整を繰り返すのには、どのような意味があるのでしょうか?
フルオーダースーツができるまでの流れを追いながら、「仮縫い」「中縫い」の大切さについて見ていきましょう。
オーダーメイドは「メジャー・トゥ・メイド」から始まる
まずはスーツづくりの基本的な流れについて確認しておきましょう。
スーツテーラーでの紳士服製作は、お客様の体形の「採寸」から始まります。腕だけが長かったり、肩幅がしっかりしていたり、人間の体形というものはバラバラです。オーダーメイドでは、肩周りや腕の長さ、腰回りなどをテーラーが丁寧に採寸し、着心地の良い寸法を導き出します。
国内ではあまり例のない工程ですが、採寸した数値に合わせて見本服を着てもらい、実際に各部の着心地を確認してもらう「フィッティング」を行っているテーラーも存在します。何百種類もの見本服を着比べてみて、より体感的に寸法を調整できることがこの工程の魅力。このような採寸作業は「メジャー・トゥ・メイド」と呼ばれ、オーダーメイドの基本的な作業といえます。
オーダースーツ製作で欠かせない「仮縫い」作業
採寸したサイズに合わせ、各部のパーツを組み合わせて「縫製」していきます。
この工程は完成品のスーツを作るものではなく、一度お客様に試着いただき、立つ・座る・歩くなど実際の着心地を確認してもらうための服です。この段階ではウール生地を切り合わせたのみで、ポケットやボタンなどは付けられておらず、目安となる縫い目や線が引かれているのみ。見た目にも、まだまだ完成された洋服とはいえないでしょう。
どれだけ数値上ぴったりの服を作ったとしても、お客様が袖を通して違和感を覚えるようでは完成されたオーダースーツとはいえません。オーダーメイドを名乗る以上、仮縫いは必要不可欠な作業といえるでしょう。
フルオーダースーツで「中縫い」を行う意味とは?
「フルオーダー」クラスと呼ばれるオーダーメイドでは、前述の仮縫いの後、「中縫い」という作業を行います。中縫い段階の洋服には、肩パットなど見た目に影響を与える服地も取り付けられます。なで肩やいかり肩、猫背がちな方の体形補正もできるため、より完成形に近いサンプルを確認していただける工程です。
2回目に行う仮縫い作業は単なる着丈の確認に留まらず、“より快適な着心地であるか”“見た目はイメージにマッチしているか”といった、理想の着心地を実現するための確認作業になります。
では「仮縫いのみのスーツは完成品ではないのか」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
あえていうなれば、1度目の仮縫いは「失敗」を前提とした縫製作業です。2度目に行う中縫い作業は、その失敗を参考に、より着心地良く美しいスーツを作るため行われるのです。
最後にポケットやボタン、カフスなどお好みの装飾を取り付けて、お客様のための1着が完成します。
フルオーダー製作では、仮縫いと中縫い、2度の確認と微調整を経て、ようやく1着のスーツが完成します。これらの工程はひとえにお客様が納得できるデザインとサイズ感のスーツを作り上げるために行われるもの。信頼できるテーラーと共に、お気に入りの1着を丁寧に作り上げていってください。