タータンチェック~流行の最先端を行く歴史あるデザイン~
タータンチェック(あるいは単にタータンとも)は、スコットランド伝統の格子柄です。
コートやスーツの生地や裏地として用いられるます。近年ではタータンをあしらったスーツも登場するようになりました。
タータンは単にスコットランドの人々に愛されてきた装飾模様というだけではなく、スコットランド文化の本質に深く関わる重要な要素なのです。
今回は、時として政争や戦争の要因にさえなったタータンの歴史と魅力をお伝えしたいと思います。
タータンの起源
タータンの元になった「布を格子状に織る」習慣そのものは、五世紀前後にアイルランドから伝来したものといわれています。この格子柄はブレアカンと呼ばれ、薄い色に染められたリネンで格子柄に織られ、膝のあたりまでの長さのジャンパースカートのような形に仕立てられ身に着けられていました。
タータンという言葉が定着したのは十六世紀頃というのが通説です。
語源については諸説ありますが、フランスの古語で「麻と毛の交織織物」を意味する「テリターナ」が訛っと考えられています。
現在、タータンといえば多くの人はウールの糸染織物を思い浮かべますが、最初期のタータンは麻織物でした。これは、スコットランドの高地地方(ハイランド)で十分な羊毛が取れるようになると、防寒性に優れるウール(羊の毛)を用いるように変化していったためです。
この頃には、様々な衣類や寝具にタータンチェックが施されました。毛布や、敷物、そして衣類など多岐に渡ります。
スコットランド社会における「タータン」が持つ意味
今日における、スコットランド人のルーツを探るとケルト人に行き着きます。
彼らがスコットランドに定住したころ、次第に血縁関係の団結を重視する「クランシップ(氏族制度)」を形成していきました。そして、ハイランドを中心にクラン(氏族)や一族(ファミリー)を象徴する独特のタータンチェックのチュニックやショールを着用し、クランやファミリーの団結力を表すようになったのです。
また氏族を象徴する装飾模様であるタータンは、しばしば日本の「家紋」と比較されることもあります。本家と分家で同じ家紋を使う日本とは異なり、タータンの場合分家は独自の新しいパターン用いる点が異なります。
タータンは、同じクランの中でも時と場合に合わせて幾つかのタータンが使い分けられました。日常用いられる「クラン・タータン」、正装用の「ドレス・タータン」、狩猟やスポーツ用の「ハンティング・タータン」、喪に服す時に着用する「モーニング・タータン」などがあります。
それだけタータンは、スコットランドの文化に深く食い込んでいるのです。
ファッションとしてのタータン
ロマン小説の流行に合わせて、スコットランドへの関心が高まり十九世紀の終わりごろにスコットランド・ブームが起こりました。
スコットランド各地のタータンを蒐集した本が出版されましたが、この時に収められたデザインはほとんど当時新たにデザインされたもので、現代に残るタータンチェックは、この時代以後に生み出されたものになります。
さまざまな種類のタータン・チェック。ファッション性が強いものから、未だに社会的な意味を持つものも存在します。タータンチェックを手に取る時、その歴史に触れることで彩豊かなファッションを築いてみるのも面白いでしょう。