冬スーツを長持ちさせる手入れ― 静電気・雨・雪・汗から守る、テーラーが教える本当のケア ―
はじめに|冬は「スーツが静かに傷む季節」

雪や雨は冬スーツの大敵。濡れた後の正しい手入れが生地の寿命を左右します。
こんにちは、AT Men’sです。
「冬は汗もかかないし、スーツはあまり傷まないのでは?」とよく聞かれます。
たしかに夏のように汗でびっしょり、ということは少ないのですが、実はスーツにとって一番ダメージが蓄積しやすいのは冬なんです。
乾燥による静電気でホコリが付きやすくなり、コートやマフラーとの摩擦で生地は少しずつ削られます。
そこに急な雨や雪、満員電車の湿気が重なると、春にはテカリや型崩れが一気に表面化します。
お店にお持ち込みいただくスーツの多くが、「気づいたら急に傷んでいた」という状態です。
でもご安心ください。
スーツの寿命は、**高価な道具ではなく“毎日のちょっとした習慣”**で大きく変わります。
今日はテーラーの現場で実際にお伝えしている、誰でも続けられる冬のケアを、理由も含めてお話しします。
1. ブラッシングは“歯磨き”と同じ

冬のスーツは毎日のブラッシングが基本。ホコリや摩擦ダメージを防ぎ、生地本来の風合いを保ちます。
なぜ30秒でいいのか
ウールの繊維は、魚のウロコのような形をしています。
その隙間にホコリや排気ガスの汚れが入り込み、歩くたびに擦れて生地を削っていきます。
この状態を放っておくと、いわゆる“テカリ”や“毛羽立ち”になります。
だからこそ大切なのがブラッシング。
AT Men’sではよく、「ブラッシングはスーツの歯磨き」とお伝えします。
完璧にやろうとしなくて大丈夫。
帰宅後にハンガーへ掛け、肩から裾へ30秒優しくなでるだけで、汚れの大半は落ちます。
テーラー流のコツ
ポイントは力ではなく“方向”です。
上から下へ一方向に流すと、繊維が整い、自然なツヤが戻ります。
パンツは外側だけでなく内側も軽く払うと、膝抜けが起こりにくくなります。
お客様から「どのブラシがいい?」と聞かれますが、理想は馬毛などの天然毛。
化繊の硬いブラシは、逆に生地を傷めることがあります。
高価なものでなくても大丈夫です。毎日触れることが何より大切です。
2. 冬の大敵・静電気との付き合い方

冬のスーツケアでは静電気対策も重要。乾燥によるホコリ付着を防ぐ意識が生地を守ります。
静電気は“ホコリの呼び寄せ屋”
乾燥したオフィスに一日いると、スーツが白っぽく見えることがあります。
あれはホコリが静電気で吸い寄せられた状態。
このホコリが摩擦を増やし、生地をザラつかせます。
一番簡単な対策は、帰宅後に軽く霧吹き。
濡らすのではなく、空気に湿度を戻す感覚です。
ただし、霧吹きに入れる水は必ず清潔なものにしてくださいね。
木製ハンガーに掛けるのも理にかなっていて、木が余分な湿気を吸い、乾燥時は放出してくれます。
スプレーに頼りすぎない
市販の静電気防止スプレーは便利ですが、使いすぎるとシミや変色の原因になることも。
AT Men’sでは「困った日の応急処置」としておすすめしています。
オーダーの際は、裏地をキュプラにするだけで帯電しにくくなります。
小さな違いですが、毎日着ると大きな差です。
3. コートは“優しい相棒”にも“天敵”にもなる

コート選びはスーツの寿命に直結。素材や裏地の違いが摩擦ダメージを左右します。
肩と襟が最初に悲鳴をあげる
冬に多い修理相談が、肩と襟のテカリ。
原因のほとんどはコートです。
メルトンやツイードのコートは保温性が高い反面、表面がやや粗く、スーツの生地を少しずつ削ってしまいます。
リュックのショルダーも同じです。
すぐできる予防
薄手のマフラーを一枚挟む、同じスーツを連続で着ない、コートの裏地が滑らかなものを選ぶ――これだけで摩耗スピードは半分以下になります。
「お気に入りだから毎日着たい」という気持ちはよく分かりますが、休ませることもケアです。
4. 雨・雪・汗の“その場しのぎ”が未来を守る

雨や雪で濡れたスーツはこすらず押さえるのが基本。正しい対処がシミや型崩れを防ぎます。

スチームアイロンで繊維を整えることで、冬のスーツのシワや摩擦ダメージを軽減できます。
濡れたときの黄金ルール
突然の雨や雪に当たったら、まず落ち着いてください。
タオルでやさしく押さえ、叩いたりこすったりしないこと。
その後は風通しの良い場所で陰干しします。
暖房の前やドライヤーは厳禁です。
乾いたらブラッシングで繊維を整え、軽くスチームを当てる。
この3ステップだけで、多くのトラブルは防げます。
クリーニングの落とし穴
「汚れたらすぐクリーニング」は実は逆効果。
溶剤で必要な油分まで抜け、生地がパサつきます。
冬でもシーズン1~2回が目安。
部分汚れはテーラーでのポイント処理のほうが安全です。
5. 現場で見た“長持ちする人”の共通点

帰宅後のブラッシングと正しい保管習慣が、スーツを長持ちさせる最大のポイントです。
長く綺麗に着ているお客様には、驚くほど同じ習慣があります。
帰宅後に必ずハンガーへ、ブラシは玄関に置きっぱなし、週末に軽くスチーム。
反対に傷みが早い方は、細いハンガー、毎日同じ一着、車のシートにかけっぱなし――。
どれも些細ですが、1年後には大きな差になります。
おわりに|スーツは手入れで育つ
スーツは消耗品でもありますが、同時に“育てる服”でもあります。
毎日の30秒が、3年後・5年後の表情をつくります。
AT Men’sでは、ご購入いただいたスーツに合わせて具体的なケア方法もお伝えしています。
テカリが気になる、サイズ感を整えたいなど、どんな小さなことでもご相談ください。
一着を長く愛していただくことが、私たちの一番の喜びです。
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